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『ときめきに死す』スペース・コインランドリー視聴室/Written by MICHIRU〜2019年11月号

 

Domestic cinemas watched on TV.

 

ミチル

 

 

スペース・コインランドリー視聴室
11月号

< 『ときめきに死す』 >

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  • にっかつ/森田芳光監督/1984218日公開

  • キャスト
    沢田研二:工藤直也
    杉浦直樹:大倉洋介
    樋口可南子:梢ひろみ

  • 杉浦直樹は本作で1984年度アジア太平洋映画祭助演男優賞を受賞。

 

映画あらすじ

 謎の組織から莫大な報酬で、ある男の身の回りの世話と別荘の管理を依頼された歌舞伎町の医者を自称する大倉洋介は、北海道の山間部にある田舎町の駅で工藤直也という若い男を出迎える。

大倉は、組織から受けた綿密な指示に基づき、別荘で工藤の世話をする。酒も煙草もやらず、会話さえも拒否し、黙々とトレーニングに励む偏屈な若者との生活に神経をとがらせる大倉。しかも、工藤の正体も目的も知らされず、また質問することも禁じられている。こうして男二人での共同生活がはじまる。

組織からの一方的な指示に基づいて工藤の世話をする大倉だったが、ひたすらに日課をこなす工藤のストイックなまでの姿勢に次第に惹かれていく。

そんなある日、組織から一人の女が派遣されてくる。組織は工藤と大倉の体格や性格に応じて梢ひろみという女性を選んだのだ。しかし、工藤は梢に関心を示さず、自分の生活パターンをくずさない。手持ちぶさたに悄然としていた梢も、やがて工藤に興味を抱きだす。男二人、女一人の奇妙な共同生活がはじまった。

コンピューターが指名した組織から排除すべき人間は、何とトップである谷川会長だった。

 

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 沢田研二演じる孤高のテロリストが宗教家暗殺に失敗するまでの過程を、男二人、女一人という奇妙な共同生活を軸に描かれている。原作には出てこないコンピューターや同居の女、舞台が信州ではなく北海道、暗殺対象が政治家でなく宗教家であるなど、原作とはかなりの差異がある。当時、歌謡界のスーパースターであった沢田研二の壮絶なラストシーンが話題となった。

原作:『ときめきに死す』 丸山健二:著

 


ときめきに死す (1984) - 劇場予告編

 

こぼれ話

 『映画秘宝』誌の内田裕也へのインタビューによると、当初この作品の映画化権を持っていたのは、内田だった。アル・パチーノ主演で、内田が医師の役をやる予定だったという。しかし、沢田からの懇願によって映画化権を譲ることになった。その後、内田主演・脚本の『コミック雑誌なんかいらない!』のなかの一シーンで、ドライブインシアターで上映されているのが、本作である。

 

この時、沢田研二は35歳前後。
ひとえに彼の人気ありきの勢いでつくられた映画であろうと思いながら観始めるも次第にヨーロッパ映画を思わせるような豊かな自然や映像美、音楽に魅入られる。本編の中ではあまり重要ではない海のシーンでさえ、アラン・ドロンの『太陽がいっぱい』を思わせる美しさ。
加えて、今ならコンプライアンスの一言で抹殺されるような裸の絡みや、女性器に関する卑猥な会話を軽快に交わす杉浦直樹、テロリストにしてはあまい仕上がりのボディで「殺すぞ」が口癖の沢田研二、熱を感じさせない樋口可南子の取り合わせの妙。

 

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思いの外というか、とにかく杉浦直樹が良い。
必要に応じて躊躇なく暴力をふるい、樋口可南子との絡みは着衣にもかかわらずエロいこと。だんだん彼が外国の俳優に見えてくる。

 

そして、一瞬にしてすべてを吹き飛ばす破壊力抜群のラストシーン。
暗殺に失敗した沢田研二は拘束された車の後部座席で、手錠をかけられた自らの手首を噛み千切り、自決。
その出血量の半端なさ、あれはもうカタルシス以外の何物でもない。

 

 

いろいろと衝撃的な映画。
結果、観てよかった。

『ときめきに死す』の感想がここに。

 

今回のスペース・コインランドリー視聴室

 

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原作:『ときめきに死す』 丸山健二:著

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a writer:ミチル
属性:Sexually fluid
白玉という名の猫を妄想で飼っている

 ▼ Written by MICHIRU▼ 

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