もう遥か彼方のように感じる2020年1月の記憶をとりあえずまとめる読書感想。
ミチル
スペース・コインランドリー図書室
3月号
< アンダーグラウンド、猫、そして幻の象 >
書くより、ひたすら読んでいたい気分だった1月のシンクロ・ポイントは3つ。
その①「アンダーグラウンド」
その②「猫」
その③「幻の象」
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その①「アンダーグラウンド」
作中に出てくる時空のずれた日本国の名称がアンダーグラウンド。新型コロナウイルス感染症が蔓延している現状において、謎のウイルスの出現と蔓延に挑むアンダーグラウンドの兵士たちの姿がもはや他人事とは思えない。
犇めき、鬩ぎあい、新陳代謝を繰り返す上野。まるで細胞やウイルスのようだ。できることなら通い詰めたい。
その②「猫」
通りすがる猫、関わる猫、あの世の猫、この世の猫。タイトル通りどこかしらに猫が出てくる7話の短編集。「祭りの夜に」は情緒があってよいし、「最期の伝言」はぐっとくる。
癒されるー。また猫と生活したくなる。
愛する猫がいた(いる)人は泣いちゃうこと必至だと思うので、読むシチュエーションに注意。またいつか会えるのを楽しみにしているのはこちらも同じだと伝えたい。
その③「幻の象」
ショッピングモールで起きたテロ事件の犯人グループの名前が「エレファンツ」。人生はグレーゾーンの連続。見えているもの、知っていることが全てとも真実とも限らない。加えて、人は見たいものしか見ないし、信じたいものしか信じない。本当に厄介だ。なんともスッキリしない読後感。
胡乱なカウンセラーと4人の引きこもりによって生み出される、幻の象。こういうの好きだ。カウンセラーのJJと「不気味の谷を越えたい。人間を創りたい」という彼の野望に巻き込まれる年齢も性別もさまざまな4人の引きこもり。それは単なる始まりに過ぎず、良くも悪くも思いもよらぬ事態が待っている。物語の始まりから読み手も思わず巻き込まれるような感覚も面白いし、ラストシーンにこの物語の主題曲のようなスカボローフェアがしっくりくる感じもステキだ。読み終えてから、出版までにあった悶着を知った。早川書房、ありがとう。
その他、【小説など】
タイトルから思わず、S・キングの「ダーク・ハーフ」やらチョコレートの「アフターエイト」やらを連想。ここに出てくるのは、ファミリー・レストラン、ラブホテル、夜を潜り抜けた妹と、何かを潜り抜けるように目覚めぬ姉。
結局みいちゃんと着ているTシャツが一番印象に残った「あおい」、そう言えばライガーって引退したよなあ、すごいタイミングで読んだなあと思った「サムのこと」、濡れにくい女の雨が降る未明のモノローグ「空心町深夜2時」の3編。
待っていた。やっと読んだ。「虫」「マミトの天使」「地底妖精」の三篇を収録。ぶっ飛んでいる。特に表題作。読み終えるころにはマミトも天使もすっ飛んで「犬と肛門」として認識。
素朴な疑問を、絵で考えた新しい「死の本」。死のものがたりの章が好き。
日々抑圧に曝され、そのツラさから逃れるように一線を越える4人の人妻。コミックスを小説化したセクシーノベル。
葛飾北斎が五千分の一秒のシャッタースピードで世界を捉えた瞬間を眺めながら、生きてるだけで、あいだみつを。にんげんだもの。と私は思った。
壇蜜嬢が好きだ。最初は彼女が書いた作品だと思いながら読んでいたけれど次第に物語に引き込まれそんなことも忘れてしまった。タクミという名前が出てきた時から何となくあった予感が結実する感。勝手に斎藤工を想像する。
アイスクリームとデリバリーピザとボヘミアン。シェルターを手に入れた人間はたぶん最強。
不当な扱いをしてくる相手には然るべき態度や言葉で対抗しましょう、という。気持ちではキレて、言葉でキレない。日本語の運用力を身に付けることが鍵となる。
【コミックなど】
『マッドジャーマンズ ドイツ移民物語』 ビルギット・ヴァイエ 訳:山口侑紀
『Madgermanes』。てっきりイギリス英語の mad(頭がおかしい)だと思っていたら、「ドイツ製」という意味だった。時代の流れに逆らわなかった者、流れを楽しんだ者、流れの中を毅然と泳いだ者。故郷って、何だろう。読み応えのあるグラフィックノベル。
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『ハニー&ハニー -女の子どうしのラブ・カップル-』 竹内佐千子
2人の日々や関係が楽しそうで読んでいるこちらまでほっこり。
▼筆者紹介▼
- a writer:ミチル
- 属性:Sexually fluid
- ペット:白玉という名の猫を妄想で飼っている
▼ Written by MICHIRU:過去記事▼
Written by ISAMU <パラサイト・コインパーキング編集部>
その①「アンダーグラウンド」
その②「猫」
その③「幻の象」
この三つの「シンクロ・ポイント」を見て、僕が思いついたのは「村上春樹」。
その①「アンダーグラウンド」
村上春樹さんご自身が地下鉄サリン事件の被害者にインタビューを行い、そのリアルを記した『アンダーグラウンド (講談社文庫)』。罪の無い人々の平穏な日常がある朝、一瞬にして破壊される。そしてそこから始まった人々の人生の声をひとりの傾聴者として、同時代に生きている人間として手に取る必要があります。
その②「猫」
猫はよく出てくる(ような気がするんだけど)、飼い猫の失踪がひとつの引き金となって始まる物「ねじまき鳥クロニク(新潮文庫) 」の印象は強いです。
その③「幻の象」
檻の中の大きな(一般的な大きさ)の象がイリュージョンのごとく消えてしまう短篇「象の消滅」 。ハルキ的です。
僕個人としてはどれともシンクロしていないのでアンテナを張って数日過ごしてみます。
天貫勇「書評やレビューみたいなカッコイイものじゃ無くて良い」