ねっとりとネット

ねっとりとこびりついた「ねっとり」をねっとりと、ネットへくっつけるネット。

『生誕125年記念 速水御舟』山種美術館にて。

さて、
ご機嫌な蛾になって。

山種美術館『生誕125年記念 速水御舟』

www.yamatane-museum.jp

みどころ

  1. 全点コンプリート!山種美術館所蔵の御舟コレクションを前期・後期の展示に分けて、10年ぶりに一挙公開!
    10代の作品から晩年の作品まで、120点にのぼる山種美術館の御舟コレクションを前期・後期に分けて全点公開。全点公開は2009年以来、10年ぶり!
  2. 速水御舟の2つの重要文化財、《炎舞》《名樹散椿》(ともに山種美術館)が3年ぶりに同時公開!
    重要文化財に指定されている御舟の《炎舞》(全期間展示)と《名樹散椿》(6/8-7/7展示)が同時に展示されるのは、2016年の速水御舟展以来、3年ぶり。御舟畢生の代表作を同時にご覧いただくことで、各時期に御舟が到達した境地を知ることのできる貴重な機会!

 「新美の巨人たち」を見て山種美術館の存在を知った。渋谷から歩いて行けるエリアにあるのに知らなかったのは、自称:アート・ストーカーとしての経験・勉強不足を実感。

新美の巨人で得た知識

  • 「大切な作品に照明の光を当てちゃダメじゃない」とお客さんからおしかりを受けるほどに『炎舞』は発光しているようにみえる。
  • 『炎舞』の炎の描き方。
    ベース:古典的、様式的→不動明王などの火焔光背
    炎の先端:写実的
  • 「蛾の目が生きていますね」と昭和天皇がおっしゃったらしい。
  • 蛾=死と再生のシンボル。

速水御舟の言葉
梯子の頂点に登る勇気は貴い

更にそこから降りて来て

再び登り返す勇気を持つ者は更に貴い

  一度登った梯子なら、登り返すことは初めて登る時よりも簡単な気がするのだけれどもいかがなものか?御舟の言っている梯子と云うのは、もう一度登ったら壊れてしまう、常に限界に達するような梯子なんでは無いだろうか?
 生涯を通じて、短いサイクルで次々と作風を変えながらと言われてはいるが、どれも一貫して端正な描き込み、リアルでありながらデフォルメされた画面作りがあったと思う。

www.tv-tokyo.co.jp

 

https://www.instagram.com/p/B0k0UwBHfnk/

【『山種美術館 広尾開館10周年記念特別展』生誕125年記念 速水御舟2019年6月8日(土)~8月4日(日)山種美術館】決して存在しない、リアルな存在。魔力的な破壊と創造。#速水御舟#山種美術館#広尾#炎舞


 御舟の描く動物はなにやら不気味だった。何が不気味かと言うと牛、馬、ラクダなどの動物の「目」だ。本物とは異なって人間の目のように「白目」がある。その上、眼差しが鋭かった。骨格も骨太で、牛なんかは全身を万力で挟まれたように皮膚がギュッと蛇腹になっていて、サイや大袈裟に言ってトリケラトプスのようでもあった。
 『炎舞』は極単純な絵でもある。暗闇の中で燃え上がる炎とそれに群がる8匹の蛾。しかし特別な作品だ。どこを見ても普通でない。やはり画面が炎を中心に発光している。写真で見るよりも暗闇は黒くは無くて、炎の影響を受けてぼんやりと赤みを帯びている。炎は見れば見るほど炎では無い別の何かに見える。葉脈や筍の先端のような植物に見えなくも無い。ステーキがこんがり焼けたり、パラパラの炒飯が作れるような火力ではない。なんだか冷気を帯びたような炎だ。蛾はかなり精巧に描きこまれている。しかし数種類の蛾が同時に集まって飛ぶのだろうか?(他の虫だって集まってくるんじゃないのだろうか?)
 焚き火をすれば一応は見られるであろう情景が幻想的に作り込まれ、デフォルメされながらもとてもリアルだ。その技術の高さや画家としての能力、常に新しい梯子を打ち立てては登る御舟の魂が燃え上がる。
 蛾は炎に飛び込んだら死んでしまうのでは無いだろうか?しかし炎の光には近寄らずにはいられない。ぼくもその蛾なのかも知れない。危険を犯しても恍惚の甘い光を求めなくてはいけない。

それではお先に(失礼します)!!