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『アニオタとビール②(基礎知識1編)』きっしー アニオタの独り言・第四弾

 

アニオタの独り言

~アニオタとビール②

(基礎知識1編)~

 

 

〇はじめに

どうも、冴えない理系オタクおじさんのきっしーです。

7月も終盤にもかかわらず中々梅雨が明けません…。洗濯物が干せずに困っている平成4年生まれ独身一人暮らしの夏です。

 

さて、今回もビールについて解説していきます。読んだ人がよりビールを楽しめるような記事になっているかと思います。

 

▼前回のきっしーの記事はこちら▼

www.netritonet.com

 

ビールは主に

  • ホップ
  • 酵母

の4つの原材料から作られており、今回はビールの要である麦について紹介いたします。

 

 

〇麦について

麦はイネ科の植物で主にビールに使用されるのは大麦の二条大麦というものが使用されます。

発芽のしやすさやデンプン、タンパク質を分解する能力が優れていることから、二条大麦はビールづくりの最適なパートナーとなりました。

さらに大麦は19世紀以降、よりビールに適したものとなるべく、品種改良を受けてきました。

 

麦の胚乳(図1参照)にはビール造りには欠かせない

  • タンパク質
  • デンプン

が蓄えられており、ビールに様々な風味や味をもたらします。

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またビールにおいて重要なですが何故なかなか消えないのかというと、麦由来のタンパク質がビール中の炭酸ガス(二酸化炭素)の周りを取り囲み、泡が壊れにくくなるからです。

 

 

〇大麦と小麦の違い

ビールには大麦だけでなく小麦を使用したビールもあります。

大麦と小麦の違いは粒の大小というわけではなく、ザックリ言うとグルテンというタンパク質が含まれているか否かです。小麦にはグルテンが豊富に含まれています。

小麦は小麦粉にして水を加えて練ると粘り気や弾力がでます。この粘り気や弾力を生み出すのがグルテンなのです。よって小麦はグルテンが含まれている分、大麦よりもタンパク質が豊富であるため、ビールに使用した際、泡立ちが良いのです。

 

  

〇モルトについて

モルト(麦芽)とは簡単に説明しますと「麦自身の酵素を生成させるために発芽させた麦を乾燥(焙燥)させたもの」です(麦芽は“ばくが”と読みます)。

モルトについてより理解を深めていくために少しビールの酒造工程も交えて説明していきます。

 

【酵素の生成から焙煎までの流れ】

お酒を造る上で必要なのはエタノールであり、エタノールは菌によって糖を分解することで得られます。また糖は酵素、菌によってデンプンを分解することで得られます。

まとめると以下(図2)の流れになります。

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今回はビール造りにおけるデンプンから糖の生成に関わってくる4つの工程(以下、図3参照)を紹介していきます(糖からエタノールの生成の説明は酵母についての記事で紹介していく予定です。)。

 

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A.酵素の生成

 麦を水に浸して発芽させ、タンパク質・デンプンを分解する酵素(プロテアーゼ、アミラーゼ)を生成させます。

 

B.分解

 タンパク質はプロテアーゼによってアミノ酸に、デンプンはアミラーゼによって糖に分解されます。

 

C.焙燥

 発芽を止めるために加熱・乾燥(この工程を焙燥と言う)させる。

ただし高温すぎると酵素が失活(酵素の分解する力がなくなること)してしまうため50℃から始めてゆっくり温度を上げて80℃を超えたところで焙燥をやめます。また焙燥は発芽を止める以外にも長期保存を可能にしたりします。

この工程でモルトの完成です。

 

D.焙煎

 Cの工程でできたモルトに風味をつけるためにロースト(焙煎)する工程になります。

焙燥の後に行う工程であり、モルトにさらなる香ばしさを付けるために行います。100~230℃前後で熱せられ、その温度の違いによってモルトの色と風味が変化します。

焙煎によってモルトは深みのある風味を得ますが、高温で熱せられるため酵素は失活し糖は生成されなくなります。そのため醸造(エタノールを生成させる工程のこと)の際にはCの工程で作られたモルトと併用されます。

 

 

【モルトの種類】

 CとDの工程で作られたモルトにはそれぞれ名前があります。

 

1.ベースモルト

 Cの工程で作られたモルト。

デンプンを糖にする力があります。ブレンドすることによりビールに複雑味を与える。じっくり時間をかけて焙燥するため淡色をしています。

その名の通りビールの基本となるモルトでエタノールの生成素になります。通常、ビールに使用するベースモルトは80~90%がベースモルトです。ビールに色を付けるのは得意ではありません。

 

例)

  • ピルスナーモルト (85℃):ピルスナーのベースモルトで淡色。
  • ペールモルト(85~90℃):エールのベースモルトになる場合が多い。

 

2.スペシャルモルト

 Dの工程で作られたモルト。

風味と色を加えるために使用される。高温で熱せられたため、酵素は失活しており、糖は生成されない(僅かに酵素が失活してないモルトもあります)。

そのためスペシャルモルトだけでは醸造できません。高温で焙煎しているため、糖がカラメル化しており、モルトに色やコク、甘味を与えます。ビールに使用するスペシャルモルトは10~20%ほどになります。

 

例)

  • キルンドモルト(100~160℃):色・味・ボディともにコクが増す。
  • カラメルモルト(160~200℃):色・味・ボディがかなり濃い。

 

ベースモルト、スペシャルモルトをブレンドする比率を変えてビールに様々な風味、味、見た目を与えます。

 

 

 

〇まとめ

  • 麦にはタンパク質とデンプンが含まれており、発芽させて麦自身の酵素でタンパク質とデンプンを分解できる状態を作り出した後、焙燥しモルトにする。

  • モルトには2種類ありエタノールの生成素であるベースモルトとビールの色合いを変化させたり、コクや甘味付けをするスペシャルモルトがある。

 

今回はビールの要である麦について紹介してきました。

本当は麦、ホップ、酵母、水について1つの記事にまとめる予定でしたが、調べていくうちに麦だけで1つに記事になってしまいました。麦の奥深さを思い知らされました…。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。ビール原材料編はまだまだ続きます!

 

 

筆者紹介

きっしー

  • 冴えないオタク(主にアニメ、声優)
  • 理系男子?、理系おじさん?
  • 平成4年生まれ
  • 地方の化学系メーカー勤務
  • ビール好き
  • 推し
    南條愛乃さん
    小原好美さん

 

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