常に読みかけの本がないと落ち着かない
いつもなにかを読んでいたい
けれどお金とスペースの問題でそうそう買ってもいられない、 というわけで
図書館通いの日々の中とくに意図したわけでもないのに複数借りた 本の中に
似たようなワードやシチュエーションがしばしば現れるこの不思議
これを勝手にシンクロナイズドリーディング( synchronized reading)と呼んでみる
導かれるままに行きつく果てが知りたくて、 今日も人様が紡いだ文章を読む
ミチル
スペース・コインランドリー図書室
9月号
<名前の一致と会話する静物、そしてメンタリティー>
『偽姉妹』 山崎ナオコーラ
偽の姉妹。そう叶姉妹や阿佐ヶ谷姉妹のそれ。
血の繋がったソリが合わない姉妹とは縁を切り、 やけにしっくりくる他人と姉妹の関係を結ぶ話。家族や名前などの枠組みや既存の概念に囚われることなく思うまま に組み替えて越えて行けという。そして新たに組み替えた姉と妹。その妹の名前は「あぐり」 という。
『壁の鹿』 黒木渚
首から上だけを剥製にされたハンティングトロフィーの壁の鹿。
孤独な魂を抱えた人間に呼応して会話する壁の鹿。時になぐさめ、手を焼かせ、愛し合う、 向き合う人間次第の壁の鹿。そんな孤独な人間たちのうちの1人が壊滅的依存癖のある女子「 あぐり」。
『肖像彫刻家』 篠田節子
本場イタリアで修行したにも関わらず50歳を過ぎてもうだつの上 がらぬ肖像彫刻家。
生粋の芸術家の道をあきらめてはじめてわかる自分の本当の才能。「会話する壁の鹿」がいれば「ジタバタし始める肖像彫刻」 もあるということで。
『樹木希林 120の遺言』 樹木希林
1973年~2018年にかけての彼女の120の言葉。
老いや病にも触れている。
『回復する人間』 ハン・ガン
心や体に傷を負った人々を扱った7話の短編集。
年をとる、病気になる。心が壊れる、怪我をする。いずれもそれ以前の状態に戻ることは叶わない。けれど現状を受け入れて進む姿には通ずるメンタリティーがあるように思う。
<そして番外。映画とのシンクロ>
『向日葵の咲かない夏』 道尾秀介
アンファン・テリブル! 映画『オーメン』のダミアンを彷彿。
オーメンとは 前兆・きざし・特に、よくないことが起こる前兆 のこと。
読み終えてさらに強まる『オーメン』感。
なぜならば...
- 主人公のために首つり自殺をする人。
- 母親が階段から落下して流産。
- 火事。
- 母親の墓と山犬。
- 両親死亡により新しい家族に引き取られる展開。
ここまでエレメントが揃えば、 もはやこれはオマージュと呼んだほうがよいのかもしれない。
単なる深読みなのかもしれない
元号が変わった年の9月の一端
数々の本たちの感想に載せて。
2019年9月の図書
- 『夢と気づくには遅すぎた。』 堀真潮
- 『男子のための人生のルール』 玉袋筋太郎
- 『死に山: 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』 ドニー・アイカー
- 『男友だちを作ろう』 山崎ナオコーラ
- 『意味がわかるとゾクゾクする超短編小説 54字の物語』 氏田雄介
- 『火口のふたり』 白石一文
- 『エアマスター 1~7』 柴田ヨクサル
- 『ベルサイユのばら 愛蔵版(外伝)』 池田理代子
a writer:ミチル
属性:Sexually fluid
白玉という名の猫を妄想で飼っている