誰かと寝るのも、ひとりで眠るのも、どっちも好き。
眠りには、外圧、回復、逃避があると思っている。
そして眠りを小さな死に例えるなら、再生であるのかもしれない。
ミチル
スペース・コインランドリー保健室
10月号
< ねむりについて >
10月の私は弱っていた。
心身ともにやられていたらしく日に13時間眠ってもまだまだ眠れそうだった。
意識を失い、心身が現実から逃れ回復しつつ、おまけにとりどりの夢まで見られるなんて、なんて幸福だろう。
思えば、小さい頃から眠くて眠くてしかたがなかった。
早起きなんてもってのほかで、朝早く学校へ行く意味が分からなかった。
学生時代は朝礼拝の時間に体調不良を訴えては保健室のベッドで寝ていた。
あの馴染みのない空間での束の間の意識の喪失はクセになる。
そしてのち、飼い猫のペースに合わせて眠ってみたことがある。
なんの苦も無く眠ることができたし、毎回私の方が起きるのが遅いくらいだった。
あの頃の私は何から逃げていたのだろう。
そしてふたたび、毎日毎日ねむくてねむくてしかたがない。
でも今回の原因はなんとなく察しはついている。
そんな日々の10月も後半、久々に悪夢を見た。
前にも1、2度見たことのある、目覚めてからもやけに「残る」悪夢。
あの湧き出る罪悪感と、取り返しのつかない焦燥感は、思い返しても実に気持ちが悪い。あの夢を見た時は、夜中に目覚めてからなかなか眠りに戻ることができなかった。
けれど、このあたりから徐々に回復の兆しが見えてきたのではないかと思う。
以前読んだ、
『男友だちを作ろう』山崎ナオコーラ(著) の中で、
前田司郎氏が
「動物の眠りって外圧から引き起こされてるんじゃない?すごく寝たがるっていうのが、死にたいっていうのに繋がるんじゃないかな」
「世界まる見えみたいなのでやってたんだけど、地震が起きて、瓦礫の下に閉じこめられた人たちの再現VTRをやっていて、救出されたとき、生き残った人はすごい寝てたんだって」
と語っていた。
それらに自分を照らし合わせてみると、普段は死にたがっているのに、有事の際は生き延びるタイプ、ということになるのだろうか笑
なんだかんだで逞しいなんて、なかなか良いじゃないか。
そんな中、読んだ1冊が、
『ねむり』村上春樹 (著)、カット・メンシック (イラスト)
「眠れなくなって十七日めになる。」
という一文から始まる、睡眠を必要とせず、覚醒し続け、人生を拡大し続ける女性とその先に待ち受ける果ての物語。
眠りの要・不要はさておき、村上氏の物語にでてくる食べ物はきまって美味しそうに思える。個人的にはこの人のサンドイッチと蒸留酒の描写はピカ一なんじゃないかと思っている。
今回の『ねむり』の中にもそんな描写がある
- レミー・マルタン(ブランディー)。
- チョコレート(ミルク・チョコレート)。
- 生の苺。
- チーズとレタスのサンドイッチ。
- クッキー、コーヒー、赤ワイン。
そして主人公は日々の合間にプールでよく泳ぐ。
寝具の中での微睡と水の中での揺蕩いはとてもよく似ているように思う。
それから物語と現実の共通項が見つかった、これが今回のシンクロナイズドリーディング( synchronized reading)のシンクロ・ポイントだろうか?
「眠れなくなった最初の夜のことを私は克明に覚えている。私は嫌な夢を見ていた。」
と主人公の女性は告白する、悪夢は何かのスイッチなのかもしれない。
シンクロナイズドリーディング
( synchronized reading)についてはこちら▼
新成な自分になるために、
とにかくこれを10月中に書いてしまいたかった。
こうして、ねむりに巻かれていた10月はハロウィンを機に終わりを告げる。
『ねむり』村上春樹の感想と共に夢を見る。
今回のスペース・コインランドリー保健室
男友だちを作ろう 山崎ナオコーラ
ねむり 村上春樹 カット・メンシック
上記『ねむり』の原文が納められた短編集
TVピープル (文春文庫) 村上春樹
a writer:ミチル
属性:Sexually fluid
白玉という名の猫を妄想で飼っている
▼ Written by MICHIRU▼
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