先月の外出自粛要請期間中に積読本に取りかかり、この勢いで未読も既読もすべて読み尽くして一部を除いて手放そうと目論みつつ始まった2020年6月。
ミチル
▼ミチルの先月の記事はこちら▼
< 夏目漱石、心中、タイガー、そして実体験とのシンクロ >
今回のシンクロポイントは3つ+α。
まず1つめは、夏目漱石。
『文豪たちの悪口本』『失敗図鑑』では英国でのひきこもりエピソードが語られ、『うさぎとマツコの往復書簡2 自虐ドキュメント』ではハンバーグを食べていたであろう明治の人として語られている。
一言での瞬殺感、長文でのネチネチ感、どちらも悪くないけれど、嗚呼、青鯖(太宰治)と蛞蝓(中原中也)のインパクトときたら!
子供向け偉人の失敗エピソード図鑑だけれど、大人も十分楽しめるし勇気づけられる。イラストもステキ。失敗しない人なんていない、大事なのはそこからどう動くか。
この2人の取り合わせはどうしても『5時に夢中!』を思わせる。
巻末に同番組プロデューサーのスペシャルインタビューがあるけれど、この後わりとすぐに中村うさぎが降板することになった経緯を思うと何とも皮肉な感じがする。
そして2つめの、心中。
『タイガー理髪店心中』というタイトルと『うさぎとマツコの往復書簡 全身ジレンマ』の中に出てくる「コンプレックス心中」というワード。
理髪店を営む寅雄(84)と、忘却の淵に佇むその妻・寧子(79)の日々を描いた「タイガー理髪店心中」。
食堂を営みながら日々、幼少期に亡くした母親の面影に囚わる続ける日出代(75)と、戦地での体験に苦しみ続ける夫の須賀夫(99)の日々を描いた「残暑のゆくえ」。
乱れ咲く花々、雑木の森、地下道、鬱蒼とした竹藪...。後者が特に印象深い。竹林へゆきたい、緑の中に身を浸したい、そんな気持ちになる読後感。
かねがね読みたいと思っていた、中村うさぎとマツコ・デラックスの往復書簡。お互いの深層に迫る業火の書簡のやりとりが素晴らしい。
続いて3つめ、タイガー。
『タイガー理髪店心中』というタイトルと『文豪たちの悪口本』の中に出てくる永井荷風が常連だったという銀座にあった「カフェー・タイガー」という店名。
最後に、実体験とのシンクロいろいろ
①火事見物
『文豪たちの悪口本』の中で弟子・芥川龍之介が語る夏目漱石の火事見物で紛れたであろう野次馬たちの姿と映画『フリッツ・ホンカ』の火事のシーンでの見物人たちの姿。
②蜂蜜入りミルクコーヒー
『サウスポイント』
の中に何度も出てくるハチミツミルクコーヒーと、
立ち寄ったカフェで見かけて思わず注文したハニーミルクラテ。
このところずっと避け気味だったよしもとばなな。
かつての吉本ばなな耽読の日々から徐々に足が遠のき鼻白むような感情が芽生えてしまい距離を置いていた。だけど急にこの本を読んでみたくなり今回はフラットな気持ちのままに読む。
奇抜なネーミングもキラキラしたステキな何かみたいな感じも相変わらず健在で、だけど時は流れて物語の傍観者になってしまった自分を知る。
③経血の呪力
『禁断の果実』と映画『ミッドサマー』の生理の血の呪力。同じスウェーデンの話なのでその言い伝えがさらに補強された感じに。
これは女性と男性でかなり感想が違いそう。しかし興味本位に他人の墓まで暴くとは悪趣味な。ケルトの女神・シーラ・ナ・ギグはそのままバンド名にでもしたいようなステキな語感の響き。
その他の図書館本。
出たら必ず読んでるシリーズもの。
柳刃&火野コンビの活躍に胸躍る。そして今回は親子丼が食べたくなる。出来ることならドラマの続きも観てみたいなあ。
手持ちの文庫本。
なんだか不思議な気持ちになるバラエティに富んだ短編集。「あほろーとる」「蟋蟀」、そして河童が主人公の不条理に満ちた「極楽」が印象深い。
6章で綴られる、41~42歳、25~26歳、30歳ぐらい、大学生、36~37歳、15歳のときのサエキマサヒコ。このろくでなしの生まれたときの様子や、死に際のことも読んでみたい。
そして、図書館が再開されると同時に呆気なく崩れ去る思いつき。
結局、この間に読んだ手持ちの本は文庫2冊のみ。
借りたい欲が抑えられない。笑