しょうじょななかまどとしちにんのかわいそうなおとな、おとこのこになりたかったおんなのこになりたかったおんなのこ、おれとししょうとぶるーぼーいとすとりっぱー、何かの呪文の如く長い名前の本が多かった、2021年6月の読書感想。
ミチル
- スペース・コインランドリー図書室
- ……雨風の強い某日某所の眼科の待合室では芸能人と同姓同名の呼び出し多数。シミズミサ、タナカミサコ、アベサダオ、ミウラコウイチ… 信じるか信じないかはあなた次第。
- finish
- ▼ Written by MICHIRU:過去記事▼
- Written by NUKKI <パラサイト・コインパーキング編集部>
スペース・コインランドリー図書室
今回のシンクロ・ポイントは、母と娘のあれこれ。
< 母と娘の人生の確執。或いは、ひたすらに母の愛を求める娘たち >
ひと口に母親と言ってもその存在は様々、生みの親、育ての親、実母、義母…。ここでは、産んだ実母とその娘たちのこと。
①【母と娘の人生と確執】 『最低。』/『俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』
前者は過去にAVの仕事をしていた母親とその事実を知った娘の確執、後者はストリッパーの母親とそれを見て同じ道を歩んだ娘の確執が描かれている。
『最低。』 紗倉まな
AVに出演する3人の女性たちと、AV出演歴のある母親をもつ少女を描いた短編小説集。面白く読んだ。少女の話が好み。あと、著者の人となりが垣間見えるあとがきが良い。
『俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』 桜木紫乃
ひと夏の経験というのはよく聞くけれど、ここにあるのは寒い土地の寒い季節に世代も性別も嗜好もそれぞれの4人がともに過ごした、ひと冬の物語。師匠とブルーボーイとストリッパーのバックグラウンドが知りたくなる。それから、表紙が写真ではなく画だったことに驚く、素敵な装幀。
②【ひたすらに母の愛を求める娘たち】
『母を捨てるということ』/『思いを伝えるということ』/『少女七竈と七人の可愛そうな大人』
どの娘も母親から顧みられず打ち捨てられている。物語の中だけでも十分痛ましいけれど『母を捨てるということ』は著者の実体験であるだけに重みがある。
『母を捨てるということ』 おおたわ史絵
子供は親を選べない。「産むんじゃなかった」と悔やむ母親と「いっそ死んでくれ」と願う娘。今さら言っても詮無いことだけれど彼女の父親は交際中に相手がそういう質の人だとは見抜けなかったのだろうか…とも思ってしまう。ご本人は未だ悔いが残るであろうけれど、ご自身の平安のためにも対処は適切だったと思う。依存症を知る足掛かりとしても読める本。
ぬ「親孝行なんて幻想です。自分の親だからって大切にする必要はありません」
『思いを伝えるということ』 大宮エリー
まずは、伝える。その先の受け入れられるか否かは問題じゃない、伝えなければその思いは存在していないのと同じことだから。ドアを開けるたびにテレポートする話と森の中でたき火を通して自分の心と向き合う話が好き。
ぬ「相手に受け入れられなかったら、その場合、伝えたことになるのだろうか?否定されても受け入れられたい」
『少女七竈と七人の可愛そうな大人』 桜庭一樹
絶世の美少女・七竈がもの狂いでいんらんな母の愛をひたすら乞うる物語。ともに泣いてくれる人を喪い、呪縛から逃れるための七竈の出立を祝いたい心持ち。
ぬ「母の愛なんて、みんながもらってるから自分も欲しくなる程度のものです」
その他、読んだ本。
『図解ポケット 30分でわかる! 介護保険の上手な使い方』 齋藤直路
今後の自分のため、周囲のため、知識として。分かりやすかった。常にアップデートしてゆく必要がありそうなので今後も定期的に知識を仕入れたい。
ぬ「なんと実務的な」
『ババヤガの夜』 王谷晶
Baba Yaga(バーバ・ヤーガ):スラブ民話に出てくる妖婆で、森の中に住んでいる。新道依子はスラブ系の血を引くのかもしれない。暴力の天稟がある新道依子とお嬢さんの道行き。最初から最後まで不穏な疾走感で貫かれ、芳子と正の違和感も最後には解ける。こういうの好きだ、面白かった。余韻のあるラストに続編を望んでしまう。
『オオカミ県』 多和田葉子:著、溝上幾久子:イラスト
本を開いた瞬間、この本は音読しようと決めて、1頁1頁、美しく細密な銅版画絵も味わいつつゆっくりと声に出して物語を読み進めてゆくと、だんだん自分の中にオオカミが浸透してくる。ぶじゅっとオオカミになろうぜ。オオカミに。
『鴻上尚史のもっとほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』 鴻上尚史
相変わらず冴えている。素晴らしい人間力、鴻上さんの弟子になりたい。
『結婚の奴』 能町みね子
もくじがどれも7文字のワード。ドラゴンボールも全部で7つ、なんだか縁起がよさそうだ。元はウェブ平凡連載の「結婚の追求と私的追究」というタイトルだとか、そっちの方がしっくりくる感じ。一人で気ままに暮らすのが向いている人と自分以外の誰かがいる方が生活に張りがある人っていると思う。今後の2人の生活がどう変化してゆくのか興味ある。あと1つ疑問なのが、ここに出てくる人たちって全員本名なのかしらということ。
ぬ「一人暮らしで怖い系の番組を見た後の夜を想像するだけでゾッとします。僕は一人暮らしができません。基本性質が他人が侵すことのできないほどに気ままなので、誰かと暮らせると思っている」
『男の子になりたかった女の子になりたかった女の子』 松田青子
なぜかエッセイと思い込んでいた。まあ表題作なんかはそれっぽくもあるけれど。読み終えて直ぐの今は「向かい合わせの二つの部屋」「誰のものでもない帽子」あたりが好み。時間が経てばまた変わるかも。カラフルな装幀がステキ。
『喘ぐ血』 リチャード・レイモン、ナンシー・A・コリンズ 他
記憶がないくらい以前に読んでいて、印象に残っていたのは「浴槽」と「最上のもてなし」。再読の今回は「淫夢の女」がよかった。
『三十路女は分が悪い』 壇蜜
座右の銘は「欲しいと言えば、手に入らない」、そして「降りかかった火の粉は払わず浴びる」と仰る、壇蜜嬢の人生相談。彼女は肝が据わっているので、世の女性たちがアドバイスを丸ごと実践するのは難しいかもしれないけれど、巻末の「三十路を超える歳になり」を読んで成程ね、と思う。読み終えて、壇蜜嬢とおでかけや旅行に行けたら良いのになあと思う。
……雨風の強い某日某所の眼科の待合室では芸能人と同姓同名の呼び出し多数。
シミズミサ、タナカミサコ、アベサダオ、ミウラコウイチ… 信じるか信じないかはあなた次第。
finish
▼筆者紹介▼
- a writer:ミチル
- 属性:Sexually fluid
- ペット:白玉という名の猫を妄想で飼っている
▼ Written by MICHIRU:過去記事▼
www.netritonet.comwww.netritonet.com
Written by NUKKI <パラサイト・コインパーキング編集部>
記事の掲載ありがとうございました!
母と娘の関係性、みたいなものが全く分からない。
母方の祖母は僕が幼稚園生の時に亡くなったし、僕自身男兄弟なので、日常的に目の当たりにしたことがない。
母と息子の関係性とは違う同性間の複雑な何かが、そこに生じてしまうのだろうか?
そもそも僕自身が各個人と非常にクローズドな関係性を結びがちなので共感性が低い。
それに人間関係に置いて「確執」なんて非常に面倒臭いと思っている。
・確執は作らないように日々、関係性を築く。
・確執は角質の如く取り除く。
・改善する気の無い確執からは即座に逃げる。
ので無縁です。
ただ世の中には不器用というか、あえてなのか、ナチュラルボーンなのか、確執メーカーがいらっしゃることを忘れてはいけません。
僕の浅はかな経験から言ってしまうと、そういう方は大概、身内との(特に親との)関係性が上手くいっていない可能性が高い。もしくは親同士の関係性があまり良くない。もちろん全ての確執生産者がこの法則に当てはまるわけではないですが。
けど僕は思うんです。
自分自身の他人との関係性を身内に邪魔されてたまるかと。
僕自身は独立した揺るぎない、ひとつの機関である。もちろん血縁関係というのは厄介なもので体に遺伝子として組み込まれてしまっている。そこをスマートに対応できるのが大人としての所作のひとつなんじゃないかと。
ぬっきー
以下、既読。